研究概要 |
欠損歯列を有する患者に対する治療法として,近年,種々の材質あるいは形態の人工歯根(以下インプラントと略す)を用いたインプラント義歯が注目を集め,臨床応用が開始されている。これらのインプラントの長期にわたる良好な機能を確保するためにはインプラントと周囲骨組織界面の構造が重要であるとされ,同部に影響を与える因子の検討が行われてきたが,その多くはin vivoにおける検討であり,複雑な生体環境下で互いに修飾しあう各因子の影響の詳細に関してはいまだ明らかではない。本研究では,in vitroの手法を用いて各因子のうち,特にインプラント材料の違いによる影響を明らかにする目的で,以下の実験を行った。 実験試料は,現在インプラント材料として臨床応用されている純チタン(CPTi),チタン合金(Ti),単結晶(SA1)および多結晶(PA1)アルミナセラミック,ジルコニアセラミック(Zr),ハイドロキシルアパタイト(HA)の6種をディスク状に成形したものを用いた。各試料を培養皿底部に設置し,ラット大腿骨より採取した骨髄細胞を調整した培養液中にて培養し,各試料上における培養開始28日後までの細胞反応を検討した。 1)採取した骨髄細胞のアルカリフォスファターゼは活性は培養開始後14日から21日にかけて高い値を示し,以降大きな変化は認められなかった。2)7日,14日と経過するに従い,いずれの試料においても細胞付着数が増加したが,PALおよびHAにおいて特に著明であった。3)14日以降,PA1およびHAに付着した細胞では細胞外基質を盛んに産生し,突起を形成しながら伸展,偏平化した。4)28日になると,すべての試料において細胞は偏平化して多層の細胞層を構成し,結節を形成していた。この形成された結節は,PA1およびHAにおいて他の試料より広い領域を占めていた。
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