研究概要 |
実験動物に移植発育させた癌種を用いてin vivo31P-MRSの測定を行なった。 実験動物:DMBAを用いてハムスターの頬嚢に発癌させた腫瘍のリンパ節転移の継代株をハムスター頬嚢粘膜下に移植して発育させた腫瘍。 装置および測定:使用した装置はJEOL製JMN-GX270(静磁場強度6.3T)。RF検出器は表面コイル型JEOL製NM-G27TSPWブローベである。スペクトル成分の評価には各成分のピークの高さの比(信号強度比)を用いた。1)PME/total,2)Pi/total,3)PDE/total,4)PCr/total,5)ATP/total,6)PCr/Pi,7)PCr/ATP,8)PME/ATP,9)PDE/ATP,10)PDE/PME,11)PME/Pi,12)PDE/Pi,13)Pi/ATP,14)pHiの14項目について検討した。 結果:コントロール群の10匹の頬嚢粘膜部の31P-MRSのスペクトルではどの個体でも明らかなピークは検出されなかった。12匹の移植腫瘍ではATP(α,β,γ),PCr,Pi,PME,PDEの各ピークが検出された。腫瘍体積と信号強度比との関係ではPCr/total,PCr/Pi,PCr/ATPでは負の相関が、PDE/totalでは正の相関がみられた。その他の信号強度比とpHiでは明らかな相関関係はみられなかった。 考察:腫瘍の増大とともにPCrの明らかな減少がみられた。腫瘍の増殖とともに低酸素状態に移行していることを示していると考えられた。腫瘍体積とpHiには明らかな相関関係が認められなかったがこれは腫瘍が明らかな壊死を伴った嫌気性状態にはなく、嫌気的経路の代謝産物である乳酸の蓄積量が少ないことが推測された。PDEは増加傾向を示し、膜分解の亢進が推測された。しかし今回の実験ではPDEとPMEのピークの分離が悪く、膜代謝の指標としては確実性に疑問が残った。 結語:コントロール群では31P-MRSの明らかなピークは検出されなかった。 移植腫瘍ではATP,PCr,Pi,PME,PDEのピークはみとめられ、PCr/total,PCr/Pi,PCr/ATPは腫瘍の増大につれ減少の傾向を示した。
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