研究概要 |
我々は免疫作用性成分の系統的探索が従来比較的少なかった担子菌を天然素材として選び、マイトゲンによるマウス脾リンパ球増殖(幼若化)に対する抑制活性を指標にして、約40種の担子菌につき系統的に検索し、その結果、約10種の担子菌に有意な活性を見出した。そこで、本研究では活性を示した担子菌中、比較的強い活性を有するキハツタケLac-tarius flavidulus、コツブタケPisolithus finctorius、ウチワタケMicroporus flabelliformis、カイガラタケLenzites betulinaにつき各抽出エキスを活性を指標に分画し、それぞれの活性本体を単離し、化学構造を解明し、更に新しい免疫抑制剤の開発のための先導化合物としての利用を考慮し、活性発現に必要な構造要因について検討した。 キハツタケからの活性成分3種はLF-1、-2、-3と仮称され、以前同菌より得られていた抗菌性物質のゲラニルフェノールであるflavidulol A及びその関連物質のflavidulol B、Cにそれぞれ同定された。コツブタケからの活性成分5種はPT-1、-2、-3、-4、-5と仮称された。PT-1、-2は以前同菌より得られていた24-methyllanosta-8,24(28)-diene-3β,22ξ-diolとpisolactone[(22S)-24-methyllanosta-8-en-22,28-epoxy-3β,-ol-28-one]にそれぞれ一致すると推定された。PT-3はpisolactoneに関連した構造を有する2種の互いに異性体関係にある新化合物の混合物であると推定された。PT-4、-5はウチワタケ、カイガラタケからの活性成分に一致し、それぞれergosterol peroxide,9(11)-dehydroergosterol peroxideであると判明した。今回得られた8種の活性成分中、既に免疫抑制活性が知られていたものはergosterol peroxideのみであり、他の7種のものは今回初めて免疫抑制活性が明らかとなった。今回得られた8種の活性成分について、それぞれ構造活性相関につき誘導体作成による活性比較等の方法により検討を行った。
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