研究概要 |
スーパーオキシドは活性酸素の一種であり、生体内で常時普遍的に生成している反応種である。そして炎症などの例にみられるように過剰なスーパーオキシドの産生は生体構成成分を酸化的に分解し、生体に致命的障害を与えると考えられている。このスーパーオキシドの反応性を化学反応に応用し,有用な酸化反応系を開発することが本研究の目的である。現在までに、ある種のプロトン源の存在下でハイドロパーオキシラジカルを生成し,この反応種がスーパーオキシドにみられない酸化反応をひきおこすこと,またある種のハライドの存在下で高収率でオレフィンの酸化など有用な反応を進行させることを明らかにした。 具体的にはイミダゾールやアデニンをプロトン源として用いることによりエノン類が高収率でエポキシ化された。他のプロトン源としてプリン類,ピリミジン類などの核酸塩基を用いた時、反応がすみやかに進行し,これらがスーパーオキシドと反応しハイドロパーオキシラジカルを生成することが示された。このことはサイクリックボルタモグラムを用いた実験結果からも支持された。すなわちプロトン源とならないN-メチルイミダゾール,アデノシンなどは酸素の還元波,再酸化波に全く影響を与えず,反応しないことが示され,一方アデニンは還元波を増大させ,再酸化波を減少させた。 またスーパーオキシドは四臭化炭素と反応してトリブロモメチルパーオキシラジカルを生成し,この反応種がオレフィン類,スルフィド類,ホスフィン類の酸化をひきおこすことが明らかとなった。四臭化炭素は固体で取り扱いが容易で,しかも安価であり実用的応用面でも期待できる。本系により,mクロロ過安息香酸および過酸化水素とは異なる酸化反応が開発できた。反応機構の詳細な検討も行われた。
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