研究概要 |
異常アミノ酸α-アミノイソ酪酸(α-Aib)とイソバリン(Iva)の生合成研究はほぼ同じ手法で研究を進めるのでここでは前者を中心に述べる。α-Aibを含有する抗菌活性ペプチドTrichopolyn(TP)IとIIは現在まで純品として単離されていない。これらの生合成研究には^<13>C-NMRスペクトルの完全解析は不可欠であるので、まずHPLCにおける両物質の分離条件を種々検討し各々の単離に成功した。TP-I,IIの^1H-と^<13>C-NMR並びに各種二次元スペクトルを測定し、ほヾそれらの解析を完了した。 [2-^<13>C,^<15>N]glycineを出発物質としてSchollkopfらのbis-lactim ether 合成中間体を経る立体特異的アミノ酸合成法を利用して7段階で[2-^<13>C,^<15>N]valineの合成に成功した。また同様の方法に従い[2-^<13>C,^<15>N]isoleucineを合成中である。 Trichoderma polysporum菌はTPの生産に関し不安定である。この問題を解決しなければ酵素レベルでの実験等の遂行が困難と考えられたので、本菌の安定化条件、高生産株の選抜、培地条件等種々再検討した。その結果、本菌の生育に伴い培地中のグルコース濃度が減少しまたpHは低下する。TP生産は本菌の対数増殖期後期(培養開始48時間後)より増加し始め75時間後に最高になることが判明した。しかしTPの生産量は一定せず不安定であるので、さらに培養条件を種々検討したが現段階では解決するには至っていない。本質的な解決ではないが菌の状態により高生産株であるか否かを識別できるようになったので、最近ようやく比較的TPを高生産する株を維持することができるようになった。 上述の菌株を用いた[2-^<13>C,^<15>N]valineの投与実験よりα-Aibの生合成過程ではアミノ基は分子間転移により導入されるという予備的な結果を得たが、この問題は同菌の無細胞系あるいは酵素レベルで詳細に検討する必要があろう。
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