研究概要 |
本研究では、D-mannitolのC_2対称性を巧みに利用し、C_2対称pyrrolidine誘導体を短段階で合成し、それらをbenzaldehydeとEt_2Znの付加反応の触媒配位子として適用し、不斉誘導効率を調査した。また、不斉相間移動触媒の開発を目指し、C_2対称pyrrolidine誘導体の対応する四級アンモニウム塩類の合成を行なった。以下に結果を要約する。 D-mannitolを文献の方法により1,3:4,6-0-dibenzylidene体(1)へ誘導し、次いで2,5-0-dimesyl化後、PhCH_2-NH_2と加熱により閉環し、C_2対称N-benzylpyrrolidine体(2a)を(1)より高収率(94%)で合成した。次いでN-脱ベンジル化し、C_2対称pyrrolidine体(3a)を合成した。(3a)に酢酸基を導入し(4a)とし、次いで還元及びグリニヤ試薬によりaminoalcohol体(5a)〜(7a)を合成した。また、(2a)を酸により選択的に脱アセタール化しtetraol体を経てtetramethoxy体(2b)を合成した。(2b)から同様にして(3b)〜(7b)を合成した。(3a)及び(3b)に(COCl)_2を作用させた後、還元しD_2対称bis-pyrrolidinoethane体(8a)及び(8b)を合成した。これら(2)〜(8)を触媒配位子としてhexane溶媒中0℃〜室温でbenzaldehydeとEt_2Znの不斉付加反応を検討した。その結果、開環型pyrrolidine誘導体(7b)を用いた場合、最高不斉収率82%eeで(R)-1-phenyl-propanol(9)が得られた。また、不斉配位子触媒としてbenzylidene閉環型pyrrolidine誘導体(a-type)の場合(S)-体を、tetramethoxy開環型pyrrolidine誘導体(b-type)を用いた場合(R)-体が優位に生成することが判明した。配位子の不斉が同一でありながらその置換様式の差異により不斉誘導が逆転する極めて興味深い現象であり、反応の遷移状態の解析を含め、今後の研究対象である。新規な不斉相間移動触媒を開発する目的で、得られた2、3のpyrrolidine誘導体(2a),(5a),(5b)にMeIを作用させ対応する四級アンモニウム塩(10)を合成した。
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