研究概要 |
微細藻中の抗発癌プロモーション活性成分の探索を行なった.その結果、ホルミジウム属より不飽和度の高いアシル基を持つモノ及びジガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG,DGDG),スルホキノボシルグリセロール(SQDG)がin vitroで活性を発現し,とくにDGDGは毒性が低くin vivoでも抗発癌プロモーション活性を発現することが明らかとなった.またアシル組成と抗発癌プロモーション活性との相関を調べるため,化学合成によりまずMGDGから合成を開始し活性を検討した結果,特にオレオイル基を有するMGDGは,我々が天然界から単離したMGDG,DGDGよりも遥かに活性が強く,毒性が少ないことがわかった.クロレラ属からもSQDGが得られ、単離が困難であったが,塩基性下でHPLCを行うことにより新規化合物を含む5種のSQDGを得た.このうち1種は分枝飽和アシル基を持つ珍しい分子であった.さらにクロレラ属のMGDGやDGDGの中にも同様なアシル基を持つ新規化合物の存在が明らかとなった. この他,藍藻スピルリナ属より抗発癌プロモーション活性成分として,SQDGのモノアシル体を単離した.また抗酸化成分の探索も行なったところ,既知ではあるがクロロフィル誘導体数種の構造を決定した. 微細藻類より単離した糖脂質,硫糖脂質類のアシル基とその結合位置を決定する手段として酵素的sn-1位特異的脱アシル化反応を報告してきたが,リン脂質にも同様の反応を応用し,天然のリン脂質の構造決定の武器となる,安価なリパーゼによる酵素的sn-1位特異的脱アシル化反応を開発した.一方,糖脂質類の酵素的合成法の開発を目的としてリパーゼによるアシル化反応を行なった結果,モノガラクトシルグリセロールのsn-1位特異的アシル化に成功した.
|