研究概要 |
サイクロテオナマイド類(A,B)はTheonella属の海綿の一種より得られ、セリンプロテアーゼ、中でもトロンビンの作用を強力に阻害する活性物質として単離された。構造は新規のアミノ酸二種を含む環状ペンタペプチドであることが明らかになっている。サイクロテオナマイドAのトロンビン阻害活性はIC_<50>0.076mg/mlと極めて強く,血栓予防薬としての可能性が期待されている。このように興味ある活性を有するサイクロテオナマイドの合成法を開発することを目的として研究を開始した。 サイクロテオナマイドは通常のアミノ酸であるフェニルアラニン,プロリンの二種のほかに2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr),アルギニン由来と思われるα-ケト酸,チロシン由来のα,β-不飽和カルボン酸残基を含んでいる。まず初めに異常構成アミノ酸の効率的な合成法の開発から始めた。2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr)誘導体は文献既知の方法により合成した。チロシン由来のα,β-不飽和カルボン酸誘導体はα-アミノアルデヒドを経由する立体選択性の良い独自の方法を開発し,これにより合成した。アルギニン由来のα-ケト酸誘導体はアルギニンからC1ユニット増炭したβ-アミノ-α-ヒドロキシ酸誘導体として合成し,骨格合成の後α-ケト酸とすることにした。 構成アミノ酸の合成が終わった後,サイクロテオナマイドBを選び骨格合成に移った。相当するジペプチドとトリペプチドをそれぞれ合成し,これらのフラグメント縮合により直鎖前駆体を得,保護基を除去した後燐酸誘導体を縮合剤として閉環し,環状体を好収率で得た。これはβ-アミノ-α-ヒドロキシ酸部分をデスマーチン試薬で酸化してα-ケト酸とするとサイクロテオナマイドBが得られた。文献値と比較し確認した。 現在サイクロテオナマイドAの合成に取り組んでいる。サイクロテオナマイド類の骨格合成法を開発できたのち構造と阻害活性の相関研究に移る予定である。
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