研究概要 |
コレステロールやエルゴステロールなどの生合成を阻害する化合物は血中コレステロール低下薬または抗真菌薬として開発される可能性がある。ステロール生合成中間体の中にステロール生合成を調節・阻害するものがあることに注目して前年度までの研究によりコレスタ-7,24-ジエン-3beta-オール、14alpha-メチルチモステロール、32-ヒドロキシラノステロールなどの合成法を確立した。平成5年度は15-フッ素化ステロールに焦点を絞り研究した。すなわちステロール生合成のキーステップの一つである14alpha-メチル基の脱離反応が15alpha-水素の脱離と協奏的に起こることに注目し、15alpha-フッ素化ステロール類がステロール生合成阻害薬に成り得ると考えたのである。このような観点から市販の7-デヒドロコレステロールから8種の15-ヒドロキシステロール類を合成し、そのフッ素化反応を検討した。フッ素化試薬としては水酸基を直接フッ素に置換することのできるジエチルアミノ三フッ化硫黄、およびトリフルオロメタンスルホン酸エステル体などをフッ素で置換する作用のあるテトラ-n-ブチルアンモニウムフロリドを用いた。この結果、15alpha-フルオロ-5alpha,14beta-コレスト-8-エン-3beta-オール、15beta-フルオロ-5alpha,14beta-コレスト-8-エン-3beta-オール、15alpha-フルオロ-14alpha-メチル-5alpha-コレスト-7-エン-3beta-オールおよび15alpha-フルオロ-4alpha,4beta,14alpha-トリメチル-5alpha-コレスト-7-エン-3beta-オールの4種の15-フッ素化ステロールを合成することができた。この中最後の化合物は14alpha-メチル基の脱離反応およびHMG-CoA還元反応を阻害するする作用のあることが判明した。
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