研究概要 |
ヒトIL-6の末端領域には、Leu残基が7残基ごとに3回繰り返して存在する部分が2箇所ある(Leu152,Leu159,Leu166とLeu168,Leu175,Leu182)。これらのLeu残基の部位特異変異株を作成し、受容体結合活性とB株化細胞の免疫グロブリン産生誘導活性を調べた。両活性ともに、3残基変異株Leu168,175,182→Valでは、野生株の1%に減少した。一方、3残基変異株Leu152,159,166→Valでは、受容体結合活性は13%保持していたが、免疫グロブリン誘導活性は2%に減少した。次に、より受容体結合に関与していると考えられるLeu168,Leu175,Leu182の1残基変異株を作成した。1残基変異株の中では、変異株Leu175→Valは最も両活性が低下しており、受容体結合活性が野生株の8%、免疫グロブリン誘導活性が13%になった。 上述のそれぞれ3つのLeu残基を含む2つのペプチド断片(Leu152-Arg169とLeu168-Met185)を合成し、受容体結合活性を調べた。ペプチド断片Leu168-Met185は弱いながらも野生株の10^4分の1の活性を示したが、一方、ペプチド断片Leu152-Arg169は有意な活性を示さなかった。 Leu残基のVal残基への部位特異変異株を、安定同位体標識を用いたNMR法によって解析し、野生株のLeu152,168,175のδCH_3プロトンとγCHプロトン間の相関ピーク及び変異体のVal152,159,166,168,175のγCH_3プロトンとβCHプロトン間の相関ピークを帰属した。次に、これまでの帰属の結果に基づいて側鎖間のNOEを解析し、Phe95,Val97,Ile167,Phe171,Phe174のシグナルを帰属した。NOESYスペクトルを解析し、ヘリックスDに存在するPhe171とヘリックスBに存在するPhe95間のNOEを観測した。さらに、ヘリックスBに存在するTyr98,101とヘリックスC、D間のループに存在するLeu152間のNOEを観測した。最も受容体結合活性が低下した変異体Leu175→ValのNOESYスペクトルを、野生株のNOESYスペクトルと比較し解析した。Leu175→Valの変異によって、(1)前述したヘリックス間NOEであるPhe171とPhe95間及びTry98,101とLeu152間のNOEの強度は殆ど変化しなかった。(2)Val175は、Phe171とのNOEの強度が減少したが、Ile167及びヘリックスBのVa197とのNOEの強度が増加した。(3)Ile167とLeu168間のNOEの強度が減少した。
|