研究概要 |
ピリドキサールを補酵素とする酵素は溶液環境の変化や酵素反応の進行に伴い、吸収およびけい光スペクトルが多様に変化する。研究代表者はそれが補講素部分の化学構造変化を反映しているものと考え、補講素またはその類似体の金属キレート化等の化学修飾により種々の状態の酵素と同じ吸収スペクトルの化学種をつくり、このモデルにより酵素の静的状態および不安定中間体を含む動的状態の活性部分の構造を解明してきた。この過程でAl(III)キレート、Cu(II)混合配位子錯体の形で不安定中間体のモデルとなるキノノイド化学種を準安定化することに成功した。本年度は他の遷移金属およびランタノイドとのキレートにつき同様の研究をおこなった。これらの研果と既に研究した反応形式についてのモデル、静的状態の吸収スペクトルモデルと合わせて、酵素活性中心の構造と反応機構の解明をさらに進めた。 1.基質が存在しない時の酵素のモデルであるピリドキサールおよびピリドキサミンのシッフ塩基について種々の溶存状態および他物質との会合状態での吸収およびけい光スペクトルを測定し、分子の構造や環境とスペクトルの関係の研究を進展させた。 2.酵素の不安定中間体モデルであるキノノイド金属キレートの分光学的、動力学的研究を、Ga(III),In(III),Fe(III),Ni(II)およびランタノイド等の金属イオンについて行った。 3.2の結果を既に研究した金属イオンのキノノイドキレートと比較した。Ga(III),In(III),およびランタノイドはAl(III)と同様にキノノイドキレートを安定化させることを見いだした。 4.報告されている酵素のキノノイド吸収中間体のスペクトルデータを3の金属キレートの結果と良く一致した。 5.1-4の研究を通して、この金属キレートは酵素の活性中心の良い構造モデルであると結論した。
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