研究概要 |
Pt(1R,2R-diaminocyclohexane)Cl_2(Pt(1R,2R-dach)Cl_2)をDNAと反応させると、Pt(1R,2R-dach)Cl_2はDNA中の核酸塩基と反応し、Pt(1R,2R-dach)-DNAを生成する。これを、マウスに免疫すると、Pt(1R,2R-dach)-DNAに対する抗体を生成する。抗体を産出するようになったマウスの脾臓を取り出し、ミエローマ細胞と細胞融合させ、HAT倍地及びHT倍地中で細胞を生育させ、Limiting Dilution法で、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマを2種類(FU-5B-58-8F,FU-III-7F)得た。得られたハイブリドーマは、すべてIgMを産出するハイブリドーマであることが判った。 今年度はこの2種類のハイブリドーマについて、抗原に対する選択性を競合ELISA法で検討した。FU-5B-58-8Fのハイブリドーマの産出する抗体の場合、抗原であるPt(1R,2R-dach)-DNAへの結合能を1とすると、Pt(1R,2S-dach)-DNAに対しては約1/3倍、cis-Pt(NH_3)_2-DNAに対しては約1/100倍、trans-Pt(NH_3)_2-DNAとDNAに対しては、結合しなかった。また、FU-III-7Fのハイブリドーマの産出するモノクローナル抗体についても、同様に競合ELISA法により抗原に対する選択性を検討した。抗原であるPt(1R,2R-dach)に対する結合能を1とするとPt(1R,2S-dach)-DNAに対しては約1/2倍、cis-Pt(NH_3)_2-DNAに対しては1/30倍、trans-Pt(NH_3)_2-DNAに対しては1/100倍、DNAには結合しなかった。以上の結果より、調製したハイブリドーマは、DNAに結合した白金錯体の部位を特異的に認識している事が判った。また、サイクロヘキサン環を有している白金錯体により強く結合する事から、抗体は錯体のサイクロヘキサン環部分を認識している事が判った。FU-5B-58-8FとFU-III-7Fを比較した場合、FU-5B-58-8Fの産出する抗体の方がより強く抗原であるPt(1R,2R-dach)-DNAを認識する事が判った。
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