研究概要 |
1.肺塞栓モデルマウスの作成及び抗血栓作用の解析:先ず、マウスに各種抗凝固剤を投与し、その30秒以内に凝固促進因子として組織因子(Tissue Factor,TF)であるリオプラスチン30mg/kgを投与した。このTF投与後のマウスの症状及び経時的変化を観察し、死亡するまでの時間(生存時間)及び投与24時間後(ペプチドの場合は1時間後)における死亡率を算出した。Annexin-Vまたは作用部位ペプチド投与はいずれも検体を生理食塩水に溶解し、10mg/kgの容量で尾静脈内投与を行った。観察の際にマウスの挙動変化によって次のスコアを付した。0:変化なし、または回復;1:鎮静;2:腹臥;3:仰臥;4:死亡。 2.Annexin-V及び作用部位ペプチドの抗血栓作用:上記方法によって肺塞栓モデルに対する作用を検討した結果、Annexin-Vは強い抗血栓作用を持つことが示唆され、1mg/kgの投与量で肺塞栓を防御し、著明な延命効果を示した。また、Annexin-Vの作用部位を形成すると思われるペプチドSHLRKV、DHTLIR及びこれらのアミノ酸配列を参考にして合成したペプチドHDTQPRVLDやHDTLIRも肺塞栓モデルマウスに対する延命効果を持つことが判明した。これらのペプチドはin vitroにおいても内因系及び外因系の血液凝固反応を抑制し、その作用発現にはHis残基の存在が必要であることが光酸化実験及びHis-Ala置換によって明らかとなった。 3.Annexin-Vの細胞内局在:Annexin-Vに対するモノクローナル抗体を用い、間接蛍光抗体法によって本蛋白質の各種培養細胞内における局在を調べた結果、特に、大腸癌細胞(WiDr,Colo320DM,Colo202,DLD-1)及び膵臓癌細胞(PANC-1,MIA PaCa-2)などの癌細胞膜内壁近傍で著明な蛍光を示した。 4.Recombinant Annexin-Vの調製:Annexin-V cDNA(ヒト胎盤由来)を遺伝子工学的手法によってプラスミドベクターへ組み込み、これを形質転換した酵母へ導入してAnnexin-V蛋白を発現させ、これを常法に従って精製した。
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