研究概要 |
慢性腎不全で産生が亢進するuremic toxinのmethylguanidine(MG)はcreatinine(Cr)を前駆体として活性酸素(特に・OH)によりcreatolを経由して産生され,その律速段階はCrからのcreatol産生にあることをすでに報告したが,本研究ではcreatolからのMG産生を触媒する酵素を肝,腎から精製し,同定した。すなわち肝ではMG産生活性はラット肝ミクロソーム画分に局在し,1%Triton X-100で可溶化後,DE52,Sephacryl S-300,Hydroxyapatite,Butyl Toyopearl 650Mで本酵素を196倍精製した。本酵素はフラビンを含み,SDS電気泳動で約50kDに単一bandを認めた。N端から40個のアミノ酸配列分析により本酵素をL-gulono-γ-lactone oxidase(EC1.1.3.8)と同定した。本酵素は酸素消費に伴いcreatolからMGとH_2O_2を産生し,また反応中間体としてcreatolの酸化物creatone A,Bを検出した。腎のMG産生活性はlysosome/peroxisome画分に局在し,超音波処理により遊離した。Butyl Toyopearl 650M,Sephacryl S-300,DE52,Hydroxyapatiteにより本酵素を122倍に精製した。SDS電気泳動で約37kDの単一bandを認め,N端からのアミノ酸配列分析結果より,新酵素であった。本酵素はフラビンを含み,その至適pHは8で,酸素消費に伴いcreatolからMGを産生した。しかし肝のL-gulono-γ-lactone oxidaseとは異なる反応機構が示唆された。一方,Cr→creatol→MG系に影響を及ぼす和漢薬成分を検討した結果,丹参成分のmagnesium lithospermate BがCrからのcreatol産生をblockすることを見い出し,radical scavengerの可能性が示唆された。一方,Cr,creatol,MGの毒性を腎不全ラットの腎機能を指標に検討した結果,MGとcreatolがほぼ同等の腎機能低下作用を示し,Crではほとんど変化しないことから,Crからのcreatol産生をblockしたmagnesium lithospermate Bの発見はuremic toxinによって生ずる疾患の治療研究に重要な知見を与えるものと考える。
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