研究分担者 |
貞広 荘太郎 川崎市立井田病院, 外科, 医長
末松 誠 慶応義塾大学, 医学部, 講師 (00206385)
松本 二郎 慶応義塾大学, 法学部, 教授 (80051241)
岡田 英史 慶応義塾大学, 理工学部, 助手 (40221840)
梅沢 一夫 慶応義塾大学, 理工学部, 教授 (70114402)
|
研究概要 |
本研究ではヒト末梢血単球の貧食活性とそれに関わる細胞レベルでの免疫機能について,以下の方法で総合的に分析できるシステムを構築し,その有効性を確認した.(1)プロテインAコート磁気ビーズ貧食能を分析する磁気泳動細胞分離法,(2)プロテインAコート蛍光ビーズ貧食能を分析するフローサイトメータ法,(3)貧食現象に関与する細胞膜のレセプター機能(Fcレセプター発現量)をFITC標識モノクローナル抗体で分析するフローサイトメータ法,(4)DCFH-DA細胞内取り込み後のH_2O_2とDCF反応による蛍光発光量で活性酸素産生量を測定するフローサイトメータ法,(5)上記の活性酸素産生量を蛍光画像の可視化で分析する共焦点レーザー走査顕鏡画像処理法である.癌疾患(胃癌,大腸癌,等)および炎症疾患(潰瘍性大腸炎,クローン病,等)を対象にその機能評価を試みた結果,次のことが明確に示された.(1)単球の磁気ビーズおよび蛍光ビーズ貧食能は健常者に比べ癌疾患・炎症疾患で大幅に低下する.(2)細胞膜表面のFcレセプター発現量は,健常者と炎症疾患で有意差はなく,癌患者で有意に増加した.また,FcγRII(CD32)レセプターはFcγRI(CD64)の約2倍発現することを確認した.(3)PMA刺激による活性酸素産生量は癌疾患・炎症性疾患で有意に増加する.オプソニン化ザイモザン刺激では癌疾患で高値を示す.とくにクローン病および潰瘍性大腸炎で極めて高い活性酸素産生量を観測した.(4)蛍光画像可視化による活性酸素産生量の定量化でも同様の結果が得られたが,とくに細胞内の食胞近傍の産生量増加の局在性が観測された.以上,炎症・癌疾患において貧食活性が有意に低下するが,逆に細胞内の活性酸素産生能力は高まっていることが示された.一方,Fcレセプター発現量との間に有意な相関はみられず,レセプター発現量がそのまま貧食機能を表さないと考えられた.
|