研究概要 |
本研究は遺伝子解析によって巨核球性細胞の分化・成熟過程を検索して巨核芽球性白血病の形質の特徴を明らかにすることにある。次のような研究成果が得られた。1.我々は,IL-3RmRNAはCMK細胞では構造的に発現されている事,及び一過程にTPAとIL-6(=巨核球球分化因子)によってdown-regulationされている事,一方IL-6mRNAの発現は巨核球分化と関連してTPAによって増大する事を見出した。此等の結果はサイトカイン受容体mRNAの発現の制御が,巨核球の分化の間に,巨核球前駆細胞の異なったサイトカインに対する反応性を制御するメカニズムの一つである事の証拠を提供しているものである。2.CMK細胞にはp21AmRNAとsmg p21BmRNAの双方が検出された。それらの濃度はTPAによって著しく増大,CMK細胞をより成熟した巨核球に分化させた。Smg p21蛋白分子は又TPA誘発性のCMKの分化中にも増量した。TPAによるsmg p21mRNAレベル上昇のタイムコースはGPIIbmRA増加のタイムコースより急速であった。これらの結果はsmg p21が巨核球分化の制御において重要な役割を演ずる可能性を意味する。3.CMK細胞は構造的にrho A及びrho C mRNAを発現している。ボツリスムス菌から得られたC3エクソエンザイム(C3)は,CMK細胞におけるrho蛋白の不活性化を,ついで巨核球の多核球化を惹起した。此の成績はrho蛋白が巨核球多核化のregulatorとして働く可能性を示すものと考えた。4.新しい巨核球性白血病細胞核(KH184)は表面形質分析で,GPIb及びGPIIb/IIIa抗原を示したが,ノーゲンブロット法では,成熟巨核球のマーカーであるPF4mRNAは認められなかった。又,LIF,IL-3,GM-CSF,IL-6などのサイトカイン或いはTPAのいずれもがKH184細胞の増殖及び分化いずれをも惹起することができなかった。これらの所見はKH184は巨核球造血の機序を検索する上で,有用な細胞株であることを示している。
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