研究概要 |
糖尿病性細小血管症,動脈硬化症の発症機序について以下の検討を行ない以下のような結果を得た。1)血管内皮細胞(HUE)細胞にAR,SDH活性を確認した。2)HUE細胞および血管平滑筋(SMC)細胞においてはNa依存性MI取り込み機構の存在が確認された。Ouabain添加時には,2.5mM以上でMI取り込みの有意な抑制がみられた。Gは25.5mMの濃度でMI取り込みを25%抑制し,かつ濃度依存性の抑制効果を示した。次いで,アルドース還元酵素阻害剤(ONO2235),イコサペント酸エチルのMI取り込みに対する効果を検討したが,G濃度27.5mM,55mMにおいて両者ともMIの取り込みの有意な改善がみられた。3)HUE細胞のPDGF産生量は培養液中のGlucose(G)濃度依存性に有意な(p<0.05)増加を示し(5.5mM 25.2(Fmol/24hrs/dish),13.8mM40.0,27.5mm 45.8)。高浸透圧対照では,25.9と対照との差を認めなかった。また,phorbol ester添加群では,40.9(p<0.05)と有意に増加した。Northern Analysisでは対照(5.5mM)に対し,高G群,phobol ester添加群では発現量は増加することが判明した。またAngiotensinII(10^<-6>M)は有意にPDGFの産生を亢進させた。4)ヒト大動脈由来血管平滑筋細胞(hASMC)においてCapsoniらの方法を用い遊走能に対する効果について検討したがEPA(3×10^<-6>M)の添加によりPDGF(50mg/ml)のみ添加した群に比較してhASMCの遊走能は有意に抑制され,EPAは高血糖時のMI代謝の改善および,抗動脈硬化作用を有することが明らかとなった。5)臨床的にはEPA,LipoPGE_1などが糖尿病患者下肢血流を改善することを報告した。6)ヒト培養血管内皮細胞(HUE)を用いて高グルコース下におけるNOの産生およびEPAの効果の検討を行った。その結果,(1)G 5.5mMと比べG 27.5mMでは[NO_2]が有意に低下。(2)EPAを付加した場合G27.5mMにおいて有意に上昇。(3)EPAを付加した場合[Ca^<2+>]iを増加させ,高グルコースにより抑制されたNO産生を改善し,高グルコースによる血管障害の改善因子であることが示唆された。
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