研究概要 |
1.日本人のTBG完全欠損症TBG-CDJは395個のアミノ酸から成る蛋白の352番目のコドンの1塩基欠失によるframe shiftと終止コドンの早期出現によりC端の22アミノ酸を欠くことが推測される。発現実験により、TBG-CDJは粗面小胞体での複合糖鎖の付加を受けず、このためGolgi装置へ移送されず、細胞外に分泌されないことが判明した。遺伝子スクリーニングにより,解析した日本人TBG-CD23例全例が同じ変異を有していた。 2.女性のTBG-CD患者の解析で,X染色体の不活化が必ずしも均等に生じていないことを示した。この患者はTBG-CDJと正常TBGのヘテロであったが,正常TBGの乗ったX染色体が選択的に不活化されるために完全欠損を来していた。(投稿準備中) 3.日本人のTBG減少症TBG-PDJは1塩基変異により363番目コドンPro(CCT)がLeu(CTT)に置換する。発現実験により、TBG-PDJは粗面小胞体からGolgi装置への移送遅延のため減少症を来すことが判明した。この細胞内移送障害にmolecular chaperone機能を有するGRP78の発現誘導が関与していることも明かにした。(投稿準備中) 4.家族性TBG増多症において遺伝子増幅をPCRとHPLCを用いて明かにした。今後確認実験を行う予定である。 5.ヒトおよびラットTBG遺伝子プロモータ部分のクローニングを行い,解析を行った。両遺伝子にはHNF-1(肝特異的転写因子結合部位)が存在していたが,甲状腺ホルモン作用は現在までのところ認められていない。今後更に検討したい。(ラットプロモーターについては投稿準備中)ラットを用いたin vivoの実験で,副腎皮質ホルモンがTBGを負に制御していることを明かにした。
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