研究概要 |
平成4年度はまずWistar Fattyラットにおいて高血糖及び高インスリン血症を生ずるにあたり肝解糖系の酵素群GK,PFK2と糖新生系の酵素であるPEPCK各遺伝子の発現異常を伴うか否かを検討した。GK,PFK2,PEPCKの活性、mRNAレベルともWistar FattyラットとそのlittermateであるWistar Leanラットとの間で有意の差は存在しなかった。また既に高血糖を来たしているWistar Fattyラットに対してインスリン感受性を上げるとされるAD-4833を投与して上記酵素の発現と血中中間体の変化を調べた。AD-4833を投与により血糖値、インスリンレベル共に低下したが上記酵素遺伝子の発現はいずれも変化しなかった。それに対して血中中間体はAD-4833投与によりグリセロールが低下、ラクテイト、パイルベイトは増加することがわかった。以上の結果より我々の調べた限りにおいてはWistar Fattyラットの高血糖を起こす機序は少なくともGK,PFK2,PEPCK等の遺伝子そのものの異常ではなさそうである。またAD-4833の作用機序もこれらの酵素活性の調節ではないと思われた。平成5年度になりAD-4833の作用点がインスリン作用カスケードの上流であることも想定して、AD-4833投与によりインスリン感受性が上がるかどうかグルコーストランスポート活性を示標に検討しているところである。また糖尿病モデル動物の発症因子だけでなくヒトのNIDDMの発症因子についても平行して主にGK遺伝子B細胞プロモーター領域の異常との関係を調べてきた。その結果日本人においてプロモーター活性の異なるバリアントが存在することがわかり、その生理的な意義について現在検討中である。またさらにプロモーターの異常とWistar Fattyラットの高血糖との関係についても今後検討する予定である。
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