研究概要 |
糖輸送担体(GLUT)は5種類のisoform(GLUT-1〜5)が存在し、とくにGLUT-1の発現は成熟細胞においては細胞外液のglucose濃度によって調節され、低血糖ではその発現が増加し、高血糖では抑制される事が知られている。糖尿病母体からの奇形の発生機序を糖輸送担体の遺伝子の発現の調節の面から検討した。 1)GLUT-1 mRNAおよび蛋白は器官形成期(妊娠第9日-11日)のembryo、とくに神経管形成期のneuroepitheliumに強く発現しており、heart,gutにもその発現が認められた。(Diabetologia 36:696,1993)(Biochem Biophys Res Comm 193:1275,1993) 2)embryo culture systemを用い、高血糖(720mg/dl,1320mg/dl)で24時間培養(妊娠第9日-10日)した時、embryoのGLUT-1 mRNAおよび蛋白の発現は抑制されなかった。(Diabetologia 36:696,1993) 3)streptozotocin妊娠糖尿病ラットを作成し(妊娠第9日-10日)embryoのGLUT-1蛋白の発現を検討した。コントロールのembryoにくらべGLUT-1蛋白の減少は認めなかった。(Endocrinologly 134:869,1994) 4)embryo culture systemを用い、低血糖培養液(40mg/dl)で24時間培養してもembryoのGLUT-1 mRNAおよび蛋白の発現の増加は認めなかった。(Acta Diabetologia 30:73,1993) 器官形成期のembryoは成熟細胞で報告されている糖輸送担体の調節機構がこの時期のembryoでは働いておらず、糖尿病状態においてはglucoseの過剰取り込みを来し、奇形発生に導くことが推定された。
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