研究概要 |
核蛋白であるSp1蛋白が,インスリン受容体遺伝子プロモーター領域に結合し,転写活性を高めることを認め,さらにインスリン受容体遺伝子プロモーター領域に結合し,転写活性を高めるHepG2細胞特異的転写因子が存在することを認めた。HepG2細胞特異的なインスリン受容体転写調節因子の結合部位はSp1蛋白が結合するGCボックスの近傍にあることを明らかにし,その核蛋白結合部位を決定した。粗抽出核蛋白を用いたゲルシフト分析でも,標識オリゴヌクレオチド(-639/-629)をプローブとして用いると,CHO細胞,COS細胞では電気泳動上,移動を認めなかったが,HepG2細胞から抽出した粗抽出核蛋白では移動を認めた。さらに,精製Sp1蛋白を添加しても,バンドの移動を認めなかったので,Sp1と異なる遺伝子転写活性を制御する核蛋白と考えられた。この結果,ヒトインスリン遺伝子5'上流約600bpにあるGCボックスのさらに上流の約11bpの範囲に結合する蛋白がHepG2細胞に存在することが確認された。 また,HepG2細胞を大量に培養し,その核蛋白を抽出した。インスリン受容体プロモーター領域の塩基配列を持つオリゴヌクレオチド(-639/-629)との結合能をゲルシフトアッセイ及びDNAaseIfoot print法により確認しつつ,抽出を繰り返し,精製率を高めている。今後,精製した蛋白の一部アミノ酸の配列を決定し,これをもとに合成オリゴヌクレオチドをプローブを作成する。このプローブを用い,HepG2のcDNAライブラリーをスクリーニングし,その塩基配列を決定する。
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