研究概要 |
腫瘍中のインスリン様成長因子(IGF)及びIGFBPの異常について引き続き検討を行い、以下の結果を得た。 IGF-IIのSesternimmunoblotを行い,種々の病態時のIGF-IIのheterogeneityについて検討し,1)健常人では血中IGF-IIは大部分は7.5kDaのIGF-IIであり,僅かに11kDaの大分子量IGF-IIが存在すると,2)末端肥大症,腎不全では7.5kDa,1kDaのIGF-IIともに増加すること,3)低血糖を呈する膵外腫瘍(NICTH)から産生されるIGF-IIは大部分が11〜18kDaの大分子量IGF-IIであることを認めた。このNICTHでの大分子量IGF-IIが本症の低血糖の発症機構に関与している可能性が論じられているが,この分子量IGF-IIの本体が未だ明かでない。本症での大分子量IGF-IIのサイズが症例によって異なっていることより,糖鎖の違いによる可能性も否定できない。しかし,最近,少数例の検討であるが,NICTHでのIGF-IIは健常人の大分子量IGF-IIと異なり,O-glycosylationされていないと報告された。そこで,今回,11例のNICTHの血清より抽出したIGF-IIをO-Glycanaseで処理し、IGF-IIのサイズをWesternimmunoblotで検討し,末端肥大症と比較検討した。NICTH,末端肥大症とも大分子量IGF-IIはO-Glycanase処理により,〜9.5kDaとサイズは減少した。この成績はNICTHの大分子量IGF-IIはO-glycosylationをうけており,症例により糖鎖のサイズが異なっていることを示唆した。更に本症では大分子量IGF-IIは毛細血管を通過しえない150kDa複合体(IGF-II-IGFBP-3-ALS)を形成せず、毛細血管を通過しうる40kDaのIGF-II-IGFBP複合体,特に大分子量IGF-II-IGFBP-2複合体が増加し,又,多くの症例で遊離型大分子量IGF-IIの増加を認めた。これらの成績はIGF-IIのbioavailabilityの増加が低血糖の発症に関与しうる可能性を示唆した。
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