研究概要 |
本研究の目的は栄養状態とはGH分泌を連係する中枢神経の機構をラットを用いて検討することである.成熟雄ラットではGH分泌は3時間毎に拍動性に起こり,絶食時間の経過とともに拍動性GH分泌の振幅が次第に減少したが周期は変わらなかった.72時間絶食させた後餌を自由に摂取させたところGH分泌の振幅と頻度が直ちに増加した後12時間で正常の分泌動態に復した.72時間絶食させたラットに2kcalのアミノ酸液を静注したところGH分泌の振幅と頻度が増加したが正常化しなかった。同じようにブドウ糖液を2ないし4kcal投与した時は絶食による拍動性GH分泌の振幅の減少が抑制された.一方,脂肪酸懸濁液を投与した時はGH分泌は抑制された.72時間絶食させたラットに混合食(総熱量に対して炭水化物65%,蛋白25%,脂肪10%)を4,8,40kcalを摂食させた.4あるいは8kcal摂取したラットではGHの振幅と頻度が一過性に増加し,40kcalを摂取させたところ,GH分泌は正常化した.混合食40kcalあるいは蛋白40kcalの摂取によってGH分泌は正常化した.しかし,10kcalの蛋白食あるいは40kcalの蛋白欠乏食ではGH分泌は正常化しなかった.神経ペプチドY(NPY)は摂食行動を亢め栄養の不足状態では中枢神経で産生が亢まる.NPY抗血清を絶食ラットの第三脳室に投与したところGH分泌は振幅と頻度が増加した.以上の成績から,(1)絶食と栄養素の補給によるGH分泌動態の変化が明らかにされた.(2)絶食に伴うGH分泌の抑制は餌を食べられないという非特異的ストレス効果によるものではなくGH分泌の賦活には蛋白とともに摂取熱量に依存することが明らかになった.(3)栄養状態とGH分泌を連係させる中枢機構にNPYの関与が示唆された.
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