研究概要 |
ヒト白血病の原因として(1)癌遺伝子の活性化に関与するもの(2)細胞の分化・増殖の因子もしくは受容体の活性に関与するもの(3)転写促進に関与するものなどが発見されている。本研究ではさらに(4)癌抑制性物質の欠失に関与する遺伝子の同定を目的として、急性骨髄性白血病の中でも第9染色体長腕(9p-)の欠失症例に注目し研究を行なった。研究の方法は、(1)おもにサザン法による多型性遺伝子を用いた欠失領域の同定(2)PCR法による欠失遺伝子の検出を行ない、検討し得た4例中の1例に極めて特異的な欠失遺伝子を同定した。また欠失遺伝子領域の単離を試みたが現在のところ完全な遺伝子は発見できていない。具体的な研究成果は以下のとおりである。 (1)約200例の染色体解析が行なわれた急性骨髄性白血病症例のうち9q-を有する4症例からそれぞれ白血病細胞とEB virus変異リンパ芽球株を樹立し、サザン法によって多型性を指標として9q21〜9q32領域が共通して欠損していることを見いだした。 (2)4例についてはさらにD9S15,D9S152,D9S196,D9S180,D9S176,D9S173,D9S172,D9S58,HXBの各領域毎にプライマーを作製してPCR法にて白血病細胞とリンパ球との比較を試みた結果、D9S180,D9S176に欠損が集中していた。1例ではさらにaldorase Bの欠損を認めたがこの遺伝子そのものは白血化とは無関係であり、現在新たな欠損遺伝子を検索中である。
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