研究概要 |
1992年より文部省科学研究費補助金の援助を受け,白血病特異的な再構成あるいは増幅がん遺伝子に対するアンチセンスDNA分子(AS)により,その増殖抑制が可能であるかどうか検討し,平成6年3月までに以下のことを明らかにした. 1.アンチセンスDNA分子(AS)の大量精製方法の確立と血清中での安全性の検討(平成4年度). 2.ASの細胞膜透過性の検討(平成4年度). 3.ASの細胞毒性に関する検討(平成4年度). 4.慢性骨髄性白血病(CML)患者から得られた白血病細胞を,B3A2およびB2A2のmRNAに対するASと培養し,腫瘍細胞の増殖抑制を確認した(平成4,5年度). 5.ASの配列特異的アンチセンス効果をCML細胞株BV173を用いて検討し,B3A2とB2A2 ASのあいだにcross reactivityがあることが明らかにした.配列上50%の相同性があること,PS ASは培養条件により標的としないmRNAを切断する可能性があることがcross reactivityの原因と考えられた.アンチセンス効果の発現には,標的mRNAの2次構造を考慮し,どの部位をターゲットにすればより効果的であるのか,どのような培養系や細胞側の条件が影響をおよぼすのかを解明する必要があると思われた(平成5年度). 6.B2A2 ASを添加すると,BV173細胞はアポトーシスを介して,その増殖が抑制されることが明らかとなった.さらに,BV173の細胞質が抗c-ablモノクローナル抗体により染色されることを明らかにした.正常のc-abl蛋白は核に存在することから,BV173細胞では抗c-abl抗体はおもにBCR-ABLキメラ蛋白p210を認識しているものと考えられ,その蛍光強度がB2A2 ASにより減少することを確認した(平成5年度). 7.現在,ほかの白血病にみられる再構成がん遺伝子に対するASを作製し,その効果を検討中である.また,白血病細胞BV173をマウスに移殖し,ASの効果をin vivoで確認する基礎的実験に研究協力者と取り掛かり始めたところである.
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