研究概要 |
熱核融合炉ダイバータプラズマのように高いエネルギー密度を有する高熱流プラズマと材料とが接触すると,その材料の温度は上昇し,十分高温になると,材料から熱電子が発生する。このような電子放出はプラズマと材料の境界面に形成されるシースに大きな影響を与え,特にシース電圧を小さくする効果がある。シース電圧が小さくなるとシースの熱絶縁性が悪くなり,材料への熱負荷は大きくなる。本研究ではこのように高い熱流のプラズマと材料の相互作用は極めて強い非線形性を示し,この複合系が分岐現象を示すことを実験と理論両面で示した。同時に外部熱パルスによって,2つの状態の遷移が生ずることも実験的,理論的に示した。 核融合炉のダイバータの新しいコンセプトとして,熱電子放出ダイバータ板を提要したことになる。本コンセプトの特長はシース電圧が低いためスパッタリングが極力抑制されている点にある。タングステン(W)の場合に具体的検討を行い,問題点としてタングステンの蒸発と,熱の集中の2点を指摘した。前者については温度領域を適切に選択することによって低く抑えることが可能であり,後者についてはWの良好な熱伝導特性による大面積からの熱輻射で克服できることを示した。 さて高熱流プラズマと材料表面との相互作用を更にシース形成の観点から詳細に検討することにより以下の事が判明した。即ちシース電圧の低下による材料への熱負荷増大の一方,電子温度は低下するので,それによるプラズマ内部エネルギーの減少を考慮しなければならない。この新しい効果をとり入れて,本複合系の静特性のみならず熱パルス等に対する動的温特の解析をする必要性があることを明きらかにし,今後の発展的課題とした。
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