非線形分散媒質としてのプラズマは、多様な運動様式を内包していて、環境に応じて、種々の姿をみせる。この中でも、自己組織化に依る秩序形成は連続体力学系における共通の素過程として興味あるばかりでなく、長い距離にわたって粒子やエネルギーを輸送することができるので、プラズマの閉じ込め・製御という点からも重要である。一方、構成要素の渦は、その相互作用によってカオス的挙動を示す。逆カスケードによる自己組織化は渦の相互捕捉効果として捕らえることが出来るが、ミクロとマクロの運動様式の対応を明らかにしておくことも現象を理解し、制御する上で重要である。本研究ではプラズマにおける多次元秩序構造として渦をとりあげ、その生成・発展と輸送問題について、以下の点を調べた。 (1)渦と波の相互作用 ドリフト波の渦は、偏微分方程式に従うが、その挙動は渦糸近似で十分よく記述されることが示されている。しかし渦糸近似では、もとの偏微分方程式では保存されていたエネルギーやエンストロフィーが保存しない。これは従来の渦糸記述には波との相互作用が含まれていないことによる。波を取り込んだ渦糸方程式の導出を行い、渦による波の吸収・放出過程を調べた。渦は進行方向を変化させるときに波を放出するが、波よりも速く伝播するので、ほとんど影響を受けないが、衝突過程では軌道が変化するので、波が関与してくる。これは連続体力学に基づくシミュレーションの結果とよく一致することが示された。 (2)媒質の不均一性の渦運動に対する効果 渦糸近似では密度の不均一性と幾何学的配位は渦度を変化させるので、渦のダイナミックスがモデルによって大きく変わる。スラブモデルではカオス的挙動を示すことが調べられた。また円筒モデルでは、渦度が大きいときは秩序構造の形成がみられ、渦度が小さければサイクロンは長生きできないが、アンチサイクロンは長寿命であることを示し、実験と一致する結果を得た。 (3)渦の閉じ込めと輸送の制御 渦のダイナミックスを外場で制御するシミュレーションを行い高周波によって渦を閉じ込めることが出来ることを、したがって輸送を制御できることを示した。
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