スンクスの感覚器系は嗅覚、三叉神経知覚が巨大に発達し、聴覚はある程度発達、視覚、味覚は劣っている。大脳は新皮質の領域が小さく、海馬、梨状葉皮質、扁桃核等は大きく発達している。特に、長く突出した鼻吻部とここに密生する触毛の感覚領域である三叉神経一次知覚領域は巨大に発達し、知覚径路の形態学的解析には絶好の材料と言える。 本研究は、スンクスのよく発達した三叉神経一次知覚領域の微細構造を明らかにすると同時に、これを一つのモデルとして、知覚神経回路の超微形態学的解析を行なうことを目的とした。皮膚知覚の中枢に於ける情報処理機構は未だ不明な点が多く、一次中枢である脊髄後角や三叉神経下行路核には、多様なシナプスが存在する。本研究では三叉神経の末梢からHRPあるいはレクチンーHRPを取り込ませその中枢端末がどのタイプのシナプスかを明らかにし、次いでそのシナプスの立体構造を明らかにする計画で研究をはじめた。 上顎鼻吻部の知覚を伝える上顎神経の投射は三叉神経下行路核の腹側から4/5以上を占める。迷走神経及び顔面神経の運動根と知覚根は他の動物と異なり延髄の腹側と背外側に別れて脳を出るが、この2根の間に上顎神経の投射が入り込むこととなる。多様なシナプスの内小型円形小胞を含み樹状突起上に停止するもの(Sタイプ)と、複雑な形態をして多数の細い樹状突起と接合するもの(Gタイプ)は少なくとも三叉神経からの一次知覚停止と思われる。これらの立体構造については現在作成中である。本研究では三叉神経運動核内における機能局在の有無についても実験を行なった。三叉神経運動核は顔面神経核の様に亜核に別れることはないが、機能局在は認められた。即ち、背側の側頭筋支配ニューロンは尾背側に、腹側の咬筋、内側翼突筋支配ニューロンは吻腹側にあり、顎二腹筋前腹支配ニューロンは顔面神経下行根に沿って伸び顔面神経副核に近く存在することが明かとなった。
|