研究概要 |
1.胚性幹細胞の分離と移植:この研究課題の第1の目的は,胚性幹細胞の移植によるキメラ・メダカの作製である.メダカ胚への細胞の移植には,直径約30-50μmのマイクロキャピラリーを用いる必要があるが,硬い卵膜が障害となる.本研究によって,メダカの孵化酵素を利用して卵膜を部分消化することでマイクロキャピラリーによる細胞の移植が可能になった.移植した個体のうち9匹の雌雄について,移植した細胞が生殖系列に伝達されるかどうかを検討した.9匹のうち,5匹においては,それが産卵した卵の1〜20%に移植した細胞由来のものが含まれていることが確認された.したがって,この研究によってキメラ・メダカでは生殖系列に移植細胞が組み込まれることが明らかになった. 2.メダカ胚細胞の培養:メダカ胚性幹細胞を培養するために,フィーダー細胞として使用する,発生の進行した胚の細胞を分離培養し,その性質について解析した.細胞は比較的高濃度の血清を要求するが,飽和密度に達してからも細胞が長時間安定に生存することなど哺乳類細胞とは異なる特徴が見出された.つぎに胞胚期のメダカ卵から胚性幹細胞を分離し,フィーダー細胞上に培養した.培養液は,マウスの胚性幹細胞に用いられているものと同等のものを用いた.胚性幹細胞は培養に移したのちも急速に細胞分裂を行ない,また一部の細胞には培養中に分化する傾向が観察された.現在は培養した細胞にキメラ作成能があるかどうかについて検討している.
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