研究概要 |
安定した高い受精率が得られ、しかも融解後の精子懸濁液からの保存液除去操作を必要としない簡易な凍結マウス精子の体外受精技術系の確立を目的とし、受精の場における凍結精子懸濁液の希釈倍率の検討を行なった。さらに、受精率を高めるための卵子側からのアプローチとして受精率の低い凍結精子と透明帯切開卵子との間で体外受精を行ない、受精率向上に対する透明帯切開術の有用性について検討した。 受精の場における凍結精子懸濁液の希釈倍率の検討 融解したICR精子懸濁液を200mulの受精用培養液中に0.5,1,2あるいは4mul添加した後、同系雌マウスから採取した過排卵卵子をそれぞれの精子浮遊液内に導入して媒精を行なった結果、2mul以上の区(希釈倍率100倍以下)の受精率は40%以下と低値であったが、0.5および1mul添加区(200〜400倍希釈)で比較的良好な受精率が得られた(71〜75%)。 受精率の低い凍結精子と透明帯切開卵子間での体外受精 受精率の極めて低いC57BL/6Nの凍結精子について透明帯の一部を切開した卵子を用いて体外受精を行なった結果、受精率および供試卵に対する新生仔への発生率は、透明帯の切開を行なわなかった正常卵子を用いた時のそれら値に比べ、極めて高値を示した(受精率:67%,供試卵に対する新生仔への発生率:14%)。 以上の結果より、凍結マウス精子を体外受精に用いる場合、融解後の精子懸濁液からの完全な保存液の除去処理は必ずしも必要でなく、単に保存液を含む凍結精子懸濁液を受精の場の培養液で200〜400倍に希釈した後に媒精すれば、受精を阻害することなく比較的良好な受精率が得られることが知られた。また、受精能の極めて低い凍結精子においては、卵子側からのアプローチとして卵子の透明帯切開術が受精率の向上に有効な手段であることが判明した。
|