研究概要 |
ジーンターゲティングやジーントラップ(挿入突然変異)等発生工学的方法を用いて,遺伝子の機能解析や劣性遺伝性疾患の解明に有用な特定の遺伝子機能を欠損した実験用マウスの作成を目的とした研究を行っている. 1)ジーンターゲッティングによるマイオジェニン遺伝子欠損マウスの作成 本年度は,筋分化に関与する重要な遺伝子の一つであるマイオジェニン遺伝子を欠失したマウスの作成を試みた.ポジティブガティブ選択法によるターゲッティングベクターを作成し,胚幹細胞に導入した.この胚幹細胞を用いて作成したキメラマウスを交配し,胚幹細胞に由来する子孫を得た.サザンハイブリダイゼーションにより,これらのマウス個体においてマイオジェニン遺伝子が破壊されていることを確認した.現在,本遺伝子欠損に関するホモ接合体を作成し遺伝子機能の解析を行っている.すでに,プロモーターレス法によりN-myc遺伝子を欠損したマウス作成に成功したいるので,ジーンターゲッティングの代表的な二つの方法のいずれも確立したことになる.今後,この手法を用いてヒト劣性遺伝性疾患のモデル動物作成に応用する予定である. 2)挿入突然変異による神経管癒合不全マウスの作成 トランスジェニックマウス作成過程で,挿入突然によると思われる新たなミュータントマウスを得た.本ミュータントマウスは,受精12日胎児の段階で頭部神経管癒合不全をきたし,新生児では頭蓋冠および脳がが完全に欠失していた.これらの現象は,ヒト無脳症と酷似しているので詳しい解析を現在行っている.挿入突然変異によるミュータントマウス作成をさらに効率的に行うために,胚幹細胞を用いたジーントラップ法を確立し,神経・筋疾患のモデルマウス作成に応用する予定である.
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