研究概要 |
微生物発酵により産生されるバイオサーファクタント(生物界面活性物質)は、従来の合成界面活性剤には見られない特異な化学構造、優れた生分解性と安全性、及び生理活性等の特性を有しているため環境適合機能物質として洗剤への応用が期待されている。本研究は石鹸にかわるバイオサーファクタントとして、脂肪酸系バイオサーファクタントであるアガリチン酸(2-ヒドロキシ-1,2,3-ノナデカントリカルボン酸)及びコリノミコール酸(2-アルキル-3-ヒドロキシ長鎖カルボン酸)について洗剤としての諸性質を調べた。アガリチン酸について、アガリチン酸の1-ナトリウム塩は最も優れた界面活性を示し、純水中で優れた洗浄性能を示した。一方、アガリチン酸の2、及び3-ナトリウム塩は優れたカルシウムイオン結合能を有し、硬水中で優れた洗浄性能を示した。コリノミコール酸についてCorynebacterium lepusから産生される微生物由来のコリノミコール酸はアルキル鎖長の異なる同族体の混合物であるため、界面活性能をはじめとする基礎的物性を明らかにするには適していない。そこで、まず単一鎖長のコリノミコール酸として炭素数12、16、20、24、及び28の5種のコリノミコール酸を合成した。合成はアルキル鎖長6、8、10、12、14の脂肪酸エチルエステルを出発物質として、まず、Claisen縮合によりケトエステルを合成し、次いで、水素化ホウ素ナトリウムによりヒドロキシエステルに変換し、最後にアルカリ加水分解によりコリノミコール酸を得た。コリノミコール酸ナトリウム水溶液の表面張力及びデカンに対する界面張力は、その濃度と共に低下し、微生物由来のコリノミコール酸ではみられない明確なcmcを与えた。cmcの値は炭素数が大きいほど小さくなり、Ycmc値も炭素数と共に低下し、炭素数16以上では一般的な合成界面活性剤のそれよりも低い値を与えた。
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