1.大気環境中には、ガス状物質のみならず粒子状物質が存在し、被服の汚れ・劣化の原因物質を構成している。本研究では、これらの物質の影響を試験布の環境暴露実験および実験室的暴露実験を通じて定量的に解明することを目的としている。すなわち、大気環境条件に対する被服の耐侯性について総合的に考察することを主眼としている。 2.環境暴露実験として8種類の試験布(綿、絹、ウール、ナイロン、アセテート、レーヨン、アクリル、ポリエステル)を用いて本学神田及び八王子校舎の屋上で大気環境に暴露した。一か月ごとに回収して、付着成分をイオンクロマトグラフおよび蛍光X線分析装置により分析した。実験室的暴露実験としてボンベガスを所定濃度に調製し、これをガラス製チャンバー内で上述の試験布に、暴露した。付着成分を測定すると共に、強伸度の変化を測定した。 3.天然繊維における付着量は、半合成および合成繊維よりも多くなることが、季節および地域の変動を越えて顕著に認められた。これは、後者の表面が相対的に不活性であることを示している結果であると言える。また、季節的には、硝酸および硫酸の付着量が夏期に上昇する傾向が認められ、光化学反応との関連性がうかがわれた。海塩粒子に起因するナトリウムと塩素は、海風の影響を受けやすい都心部で付着量が増加することが確認された。 ボンベガスを用いた暴露では、ガス濃度と付着量の間にdose-response特性で示しうる関係が認められ、暴露濃度が相違しても時間が明らかであれば、付着量が推定できることが明らかとなった。10か月程度の環境暴露では、大幅な強伸度の低下は観察され得なかった。
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