ガリレオ・ガリレイの力学研究の過程については、1970年代のS・ドレイクによる手稿類の発掘を通じ、科学史的研究が飛躍的に前進した。しかし、その学説史的な詳細については、研究者の中でも見解が十分一致していない。この研究では従来等閑視される傾向があったガリレオ独自の力学体系の形式に注目し、その形成過程を跡付けることを試みた。今回はガリレオの手稿f.152rを詳しく分析し、彼が用いた運動学的定理の特殊性に焦点を当てて、前後の手稿を確定する作業を進行させた。その結果、ガリレオが落下運動の分析に際して、加速運動を等速運動の問題に還元するシステマティックな方法を持ていたことが明らかにされた。 さらに、そのことを現代物理学の一般的な見地から再検討することによって、従来、しばしば誤って理解されてきた、ガリレオの等加速度運動の仮定から落下の時間二乗法則を導く数学的方法についても、新しい理解を提出することができた。とくにガリレオ独自の運動学の発展段階に注目することによって、手稿の順序づけを行う方法が提示された。また、この問題は、ガリレオの積分と連続量にたいする独自の概念と理解と、関係していることが明らかとなった。 ガリレオの手稿の邦訳については、従来、未訳であったものの幾つかについて、進められた。
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