研究概要 |
体格について,1900年から1990年までの91年間にわたる遂年変化を遂次回帰係数の変化を分析し,戦前にも1937〜1940年頃に,短期間であるが,体格の大型化の傾向が存在した事を見出した。これまではっきりとは,発育加速化現象の開始年,終了年について結論が出されていなかったが,これらについても,年齢段階によって異るものの1950年代の前半に開始し,1970年代前半には終了していた事を示すことが出来た。さらに1964年から1990年までの27年間の体力・運動能力の遂年データより,体格の場合と同様に遂次囲帰係数を手がかりとして,変化を分析し,体格と同様な発達加速化が見られた事を確めた。この事を青少年と中高年についても検討し,加速化が継続した年数は異るが,出現していた事を明らかにした。これらの遂年変化をすべての体力要素別に検討し,その変化傾向が必ずしも同じでない事を明らかにし,とくに青少年では身体の柔軟性の低下傾向の顕著である事を示した。その他,特久性,筋持久力もまた最近は低下傾向にある事を明らかにした。これらの1990年までの遂年変化傾向が変化しないと仮定して,遂次外捜法を利用して2000年までの遂年変化を推定した。そして1964年,1990年,2000年の3時点における体力のプロフィールを検討した。確に体格はゆっくりではあるが大型化の傾向は今後も続くと考えられ,かつ,敏捷性,瞬発力のような瞬発的な運動に関与する体力要素は向上を続けるが,特久力,筋持久力のような持久的体力要素は低下を続け,年齢によっては1964年のレベル以下にさえなる事も推測された。この事は青少年,中高年でも同様に推測された。また,青少年の運動能力は概して低下傾向を示すものが多く,体格の割には運動能力,持久的体力要素が大きく下まわる体力プロフィールを示すようになるであろうと推測された。これらの推定から日本人青少年・中高年者の体力の問題点とその解決方法を示す事が出来た。
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