研究概要 |
本研究は、持久性トレーニングが無酸素性作業閾値を基準にした回復運動時の血中乳酸消失率を亢進するか,さらにperformanceの向上とどのような関係があるかを検討した.長距離選手に8週間の持久性トレーニングを実施した結果,最大酸素摂取量,乳酸性閾値,血中乳酸消失率の各生理的パラメーターにおいて無酸素的指標である乳酸の動態を表わす血中乳酸消失率の増加分が長距離走の競技成績を示す12分間走の距離の増加分と密接な関連があることが明らかになった.このことは,他の生理的パラメーターと比較し,乳酸を除去する能力が向上することがperformanceの改善に大きく貢献することが明らかになった.これを受けて,乳酸除去能が優れていることが,競技場面において良い成績を収めることができるかを明らかにするため,長距離走のレースペースをシュミレーションすることにより、長距離選手の乳酸除去能がperformanceに如何に貢献するかを検討した.長距離走の記録に差があるが,有酸素的な生理的パラメーターの能力に差のない長距離選手を対象に絶対速度によるレースペースをシュミレートしたトレッドミルを走行させた.走行時のペース低下に対応して乳酸をすばやく低下させることのできる選手ほど,ペースアップ後に乳酸の増加分を大きくすることができ,そのことが,高い速度で長く走行することを可能にする要因として考えられる. 以上の実験結果から,スピード化が進む長距離走において,有酸素的能力だけではなく,無酸素的能力を代表する乳酸代謝の処理能力である血中乳酸除去能が持久性performanceを制限する重要な要因となることが明らかとなった.
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