多様なコラーゲン(COL)分子の発見と構造解析により、COLは細胞マトリックス成分との相互作用、細胞の接着、増殖、分化にも関与していることが明らかになってきた。また、各COL分子種の構造並びに組織分布の特徴から分子種特有の機能に対する理解も深まりつつある。 我々はヒト胎盤cDNAライブラリーから新しいCOL XVI型のα鎖をコードするcDNAを単離し、その構造を解析したところ、XVI型は分断されたCOL領域とシステインに富む非COL領域から成るユニークなCOL分子であることが判明した。XVI型COLの組織分布を検索するため、非COL領域にコードされるアミノ酸配列をもとに19残基のペプチドを合成し、ヘモシアニンと結合させ、ラットに免疫して抗血清を調製、アフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製した。α1(XVI)mRNAの発現が確認されているヒト大動脈平滑筋細胞の培養上清を用いてイムノブロットを行ったところ、分子量16万の細菌性コラゲナーゼ感受性の単一のバンドが染色された。このサイズはノーザン分析(mRNA:5.2kb)と矛盾しないことから、本抗体はα1(XVI)を認識していると判断した。精製抗体を用いて、免疫組織染色により組織分布を検索したところ、胎盤、特に羊膜に強い反応性が認められた。XVI型COLはその構造上の特徴からCOLの分子進化を考察するうえで、重要な分子であると考えられる。したがって、その遺伝子構造の解析を開始した。ヒトゲノムライブラリーからα1(XVI)遺伝子をコードする4種のクローンを単離し、うち一つのクローンについてエクソン・イントロン構造の決定を行った。COL領域をコードするエクソンは線維型COLのエクソン構成とは異なっており、また他型COLには認められないユニークな構造のエクソンも認められている。さらにα1(XVI)鎖の全エクソン・イントロン構造を決定し、同時に発現調節領域の核酸配列の決定を行う予定である。
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