Caチャンネルは脱分極をCa流入へと変換することにより多様な細胞機能の発現に寄与しており、電気生理学、薬理学的性質により複数のタイプに分類されている。Caチャンネルの関与する細胞機能の分子機構の解明には正しい分類は不可欠である。今年度は神経CaチャンネルBIcDNAに加えBII及びBIIIチャンネルcDNAのクローン化に成功した。これら3つのCaチャンネルはサブファミリーを形成しており、他方のDHP感受性L-タイプサブファミリーと供にジーンファミリーを構成していることが明らかになった。さらにはDHP感受性Caチャンネル欠損のmdgマウスより調製した筋管細胞の核にBIIIcDNAを注入したところ、W-CgTX感受性N-タイプCa電流が観察された。 CaチャンネルはCaイオンに対して、他のイオンが生理的条件下でより高濃度で共存するのにもかかわらず、高い選択性及び透過性を有する。遺伝子工学に電気生理学を併用し、この機能特性の構造的基盤を明らかにした。すなわち、第3及び第4の分子内繰り返し単位それぞれの疎水性膜貫通セグメントS5-S6間におけるSS2領域のグルタミン酸をグルタミンに置換することによって、二価カチオンに対する選択性が強く減少した。置換効果は第3の単位における変異の方がより著しく、高閥値Caチャンネルに選択的なポアブロッカーであるCdに対する感受性も強く減少させた(約200分の1)。これらの結果は4つの繰り返し単位のSS2領域がチャンネルポアの形成に異なった寄与をしている可能性を示唆している。
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