前年NO合成酵素の精製および性質の検討を目的として1)酵素活性の簡便かつ確実な測定法の確立2)牛脳より酵素の精製を試みた。活性の測定は、トリチュウムラベルしたアルギニンを用い、生成したシツルリンをTLCで分離し、液体シンチレーションカウンターで測定した。今まで報告されているカラムを用いる方法よりずっと簡便かつ確実な方法であった(発表予定)。酵素精製については、活性が著しく低く、部分精製したもののその性質をを検討するには十分な量が得られなかった。酵素そのものの含量が低いか酵素が著しく不安定なため、脳摘出のための時間中に失活したものと思われる。ラット小脳は約百倍ほど活性が高く精製も可能であったが、材料を大量に得るのは経済的に現在の研究費では不十分であった。そこで、本年度はcDNA発現系を用いて酵素の発現をこころみた。全長をコードしたcDNAをtaq プロモターをふくむベクターに組み込みE.coliにて発現させたところ、ウエスタンブロットで酵素たんぱく質の発現が確認され、十分な量の発現がみられたものの殆どが不溶性たんぱく質であった。上清の活性を測定したところ、NADPH diaphoraseをふくめ、活性は見られなかった。そこで、cDNAの一部をコードしたドメイン部分のcDNAを同様の系で発現させたが結果は同様であった。現在それぞれのcDNAにつきバキュロウイルスに組み込み発現を試みている。
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