研究概要 |
グリシン開裂酵素系はP‐,H‐,L‐proteinから構成され,グリシンをテトラヒドロ葉酸とNAD^+存在下メチレンテトラヒドロ葉酸,炭酸ガス,アンモニアに分解する反応を触媒する.構成蛋白質のうちH‐proteinはリポ酸を配合族として持つ分子量14kDaの耐熱性蛋白質であり,反応はそのリポ酸がP‐,T‐,L‐proteinの活性中心と順次接触することによって進行する.リポ酸を持つ酵素は他に2‐オキソ酸脱水素酵素復合体のE2が良く知られている.これらの蛋白質にリポ酸を結合させる反応を触媒するリポ酸転移酵素の詳細はこれ迄不明であった.我々はリポ酸結合反応の基質となるアポ型H‐proteinを大腸菌に発現させそれを用いて酵素をウシ肝から部分精製しその性質を検討した. ウシH‐protein前駆体cDNAから成熟型をコードする断片を切出し,発現ベクターpET‐3aに組込んだ.これを大腸菌BL21(DE3)pLysSに導入しH‐proteinを産生させたところ,得られたH‐proteinの80%がリポ酸を特たぬアポ型であったので,これを単一に迄精製し基質として用いた.リポ酸転移酵素は肝ミトコンドリアに局在するので,ミトコンドリア抽出液からhydroxulapatite,MonoQ colymn等を本科学研究費補助金で購入したインテリジェントイナートポンプに接続してクロマトグラフィーを行い精製した.酵素は非常に不安定で精製を進めると失活が著しく,現在のところ完全な精製には至っていない.反応でリポ酸供与体となるのはlipoyl‐AMPであり,リポ酸とATPを用いた場合はリポ酸転移は起らないので,酵素はリポ酸活性化反応は触媒しない.リポ酸がアポH‐proteinと結合したことは,反応終了後P‐proteinと組合せるとグリシンと^<14>CO_2の交換活性が出現することで測定した.またアポ型とホロ型はポリアクリルアミド電気泳動上易動度が異るので,リポ酸の結合はこりによっても判定することが出来る.
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