研究概要 |
国や地方自治体による投資および融資の財政金融は、各地域における社会資本の充実,中小企業の振興,基幹産業の発展などをはかり、地域の変容に大きくかかわりあっている。租税・郵便貯金を中心として引きあげられた財政資金は、主として、国庫から直接的に民間へ、国庫から自治体を通じて民間へ、あるいは資金運用部から政府系金融機関,公社,公団を通じて民間へと散布される。しかし、財政資金の地域的配分は均等ではなく、量的にも内容においても常に地域的差異が生じている。 本研究は、東京大都市圏外縁部に位置する茨城県を事例として、財政金融の空間構造を、市町村の財政の地域的差異とその変容を通して解明した。そのために、市町村・歳入および歳出項目・年度の3元からなる住民1人あたりの金融金額データに対し、準3相因子分析法を適用した。分析の結果、1つの県域を事例にしても、地方財政には地域的差異が厳存することが解明された。農村域で財源を国や県に依存する割合が高く、逆に都市域では自主財源の割合が高いという地域的特徴がみいだされた。これは、財政調整制度を通じて、自主財源に乏しい地域に対して財政資金を傾斜配分した結果である。財政金融は、民間金融により農村域から都市域へと吸引された資金を、再び農村域へと還流させる作用を果たしている。また、都市化によって、市町村の歳入・歳出構成が変化し、それを財政金融の視角から解析することによっても、地域の大都市圏化の過程を把握することが可能となった。
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