研究概要 |
細粒火山灰層が多数見られる大隅半島北部において,後期更新世末・完新世のテフラの層序,マグマ水蒸気噴火に由来すると考えられる細粒火山灰層の層位,さらに,それらのテフラの分布とこれから知られる給源火口について調査した.大隅半島北部には,入戸火砕流堆積物の上位に,桜島火山起源のテフラを中心として,17層のテフラが認められる.そのうち,桜島または姶良カルデラ起源のものは13層ある.これらの中には,マグマ水蒸気噴火に由来すると考えられる細粒火山灰層が4層ある.下位から,13,000年前ごろの火山豆石を含む降下火山灰(桜島・高峠4),約12,000年前のベースサージ堆積物(高野Bs),約11,000年前の(薩摩テフラ),桜島の鍋山タフコーン起源と考えられる桜島・高峠1である.また,外来のテフラであるアカホヤ火山灰と米丸スコリアも水中噴火したテフラである. 高野ベースサージは,従来その給源と推定されている若尊カルデラ付近には存在しない.これよりも南の桜島東方に当たる牛根付近で厚いことから,その給源火口は若尊カルデラよりも南にあると推定される. 鹿児島低地の沖積層の試錐資・試料を分析すると,薩摩テフラがよく検出される.このテフラが覆う地形を復元した結果,薩摩テフラは新ドリアス期の最海面低下時に噴火・堆積していることが明らかとなった.これは,従来の陸上でのC-14年代測定結果とよく合う.そのときの相対的な海面高度は現海面下およそ50mである.マグマ水蒸気噴火起源の噴出物であるベースサージ堆積物や火山豆石を含む細粒火山灰を伴う薩摩テフラは,現在の海面よりもおよそ-50m以下で噴火した可能性が大きい.
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