研究概要 |
教授学習場面における学習者の軌跡を多次元的にとらえ,効果的な教授介入に資するという当初の目的は方法論的にほぼ達成された。以下,具体的にその成果をリストアップする。 1)能力と自信度の2次元表示 学習者の正答/誤答データと,自信あり/なしデータを基に,その領域における学習者の真の学力と自信度を推定した。これによって,学力と自信度が並行的に進歩していない学習者を選びだし,的確な教授プログラムを開発することができる。 2)知識状態の推定 各学習者の知識状態の推定を,学力母数θではなく,各問を解くための「完全な知識あり」,「部分的知識あり」,「全く無知」のどのクラスに属するかを統計的に推定する方法を開発した。これによって,被験者の知識状態の偏りを検出することができる。 3)学習者の学力の事後分布の推定 学習者の状態を学力推定値θのみによって表すのではなく,Gibbs Samplerによってθの事後分布を数値的に表現する方法を開発した。この方法は,各学習者の違いを事前分布によって表現することができる。各学習者の事後分布によって,決定理論を応用して,次の教授ステップを決定することができる。 4)ベイジアンネットワークによる各学習者の状態把握 各学習者の状態をネットワークに表現し,テストに対する反応から各学習者が,いまどのような知識状態にあるかを,ベイス的アプローチによって推論する方法を開発した。 以上のような方法は,従来のテスト理論の枠を超え,学習者の知識状態を知り,教授プロセスに組み込むことができる知見を提供するものである。今後,この方法を実際のCAIに応用し,教育するためのシステムを開発することを目標としたい。
|