研究概要 |
本研究は,より知的な化学CAIソフトの実現の可能性や適用対象の検討・調査,そしてその教育上の有効性を探ることを目的としたものである. 初年度では,Basic言語を用いてどの程度そしてどの様な分野なら知的な化学CAIが作れるのかを検討してみた.ここでは知的ということを,与えられる諸条件によってはあらかじめ人間によっては想定不可能な結果を導く能力としておく.このような観点からまず,Basic言語によって分子モデルをベースとした分子の双極子モーメントやマイクロ波吸収(分子回転)に関するさまざまなシミュレーションが可能なプログラムを完成し論文として発表した.また同じように分子モデルをベースとしつつ分子の幾何学的な構造データのみから分子のもつ全ての対称要素を見いだすといういわば一種のパターン認識的ソフト開発にも成功した.それは一橋学会誌に発表した. これらの研究と同時に人工知能研究などで有力な言語とされるPrologを化学教育ソフトに応用することでどのような新しい展開が可能になるかということに特に重点的に取り組んで来た.金属イオン混合溶液に関する定性分析を題材とした化学教育ソフトの開発を昨年度に引続き行った.金属イオン5種類について,各種試薬に対する反応をデーターベース化した.与えられた金属イオン混合溶液から,データーベースを利用して個々のイオンを分離・定性する手続きを発見する推論エンジンについては,初期のモデルを改良することでより効率の良いものを作ることができた.適用可能な金属イオンはまだ少数であり,試作段階に過ぎないがPrologを利用することでより知的な化学CAIソフトを作ることができることは実証できたので,その成果は論文として発表した.
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