研究概要 |
聴覚障害者が発音訓練の自学習を可能にする装置はまだ無い。その理由は発音された音声からその調音情報の抽出が困難で、また発音の修得度が音声に与える影響の検討がされていないこと等である。 そこで本研究は発音の修得度が音声の種々の音響パラメータおよび音声発声時の呼気流にどのような影響を与えるかを検討した。発声者は聴覚障害者3名と健聴者3名である。被験者それぞれの破裂子音を含む音節の発音明瞭度は89,20,50%で、発音修得度は明らかに異なることを確認した。これら被験者が発声した破裂子音を含むVCV音節音声をサンプリング周波数8kHz、1サンプル16bitでAD変換する。そしてフレーム長30ms、フレーム周期2ms、ハミング窓を用いて、ピッチ周波数、変相関の最大値、線形予測分析時の駆動音源の振幅、音声パワー、ケプストラム距離、ソナグラム、LPCスペクトル包絡、およびLSP係数を抽出した。ソナグラムおよびLPCスペクトル包絡から求めた第1,2,3ホルマント周波数(F_1,F_2,F_3)の変化軌跡からF_1,F_2,F_3ローカス、またホルマントローカスの出現時刻から20および40ms後のF_1,F_2,F_3を求めF_1・F_2平面およびF_2・F_3平面に表示した。これらから母音の調音および破裂子音の調音位置を検討し、母音および破裂子音の発音修得度との関連を明確にした。またピッチ周波数からアクセント、そしてピッチ周波数、変相関の最大値、線形予測分析時の駆動音源の振幅、およびソナグラムから無声と有声の発音分けの修得度を推定した結果が発音明瞭度試験結果と一致することを示した。次に破裂子音を含むVCV音節を発音した時の呼気流速波形を発音修得度に着目して検討した。その結果呼気流速波形から推定される調音が、発音明瞭度試験から推定される発音修得度に矛盾しないことを示した。また音響パラメータからはわからなかった呼気の操作の修得度の示唆も得られた。
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