1.教員養成学部学生を被験者に、種々の領域での基本的な課題を用いて調査し、学力が剥落していく様を、どのような領域・問題において、大学段階で観察できるのかを明確にした。日本史のように密度濃く学習されているものは、剥落せず、物理のように高校段階で学習していても、入学時にすでに剥落してしまっているものもあり、これらは大学段階で学力の剥落過程を観察するには適していない。 2.教員養成学部学生を被験者に、高校までに学習した知識の使用可能な程度と、その知識の習得法との関係を調査した。結果は歴然としていた。使用可能な者は、暗記ではなく理解しており、数学の問題などのようにそれぞれの条件によって処理が異なる場合には、それらの間の理由をつけており、歴史の場合には、それぞれの事件間をつなぐ背後の時代の流れをおさえており、理科の場合には、それぞれの要素を機能といったことで関係づけていた。 3.このような理解している状態は、暗記の状態にはない項目間の関係を必然的にする知識が付加的に存在していた。逆にいえば、付加的な知識を考慮に入れれば、知識の状態で理解と理解していない状態を区別できるのである。 4.理解しているものと理解していないものとの差は、一般的には著しいものと考えられているが、調査してみると付加的な知識のわずかな部分が異なっているにすぎない。実験的にその部分を補ってやると、出来るようになりその効果も持続する。 5.これらの知見をもとに、小学校段階で実際に理解を強調した授業の効果をみながら、理解を付加的知識によって項目間に必然性をつけることと考えてよいこと、および理解と機械的暗記が知識の状態の違いとして記述できることの理論的整備をおこなった。
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