日本語に当てはめた場合のミスキュー分析の問題を把握するために、「屋根の上のサワン」(井伏鱒二)を使って予備実験を行った。それによって、分析の方法、および集計方法に関して、日本語に適した方法に改善した。本実験については、「アイスキャンデー売り」(立原えりか)を教材に選び、その教材を実験用に作りかえて、A4で5ページの資料を作成した。中学校の国語の教科書にでてくる教材であるが、被験者としては、小学校の5年生を選んだ。思考過程を究明するためには、やや程度を高くする必要があるからである。そして、実際に筑波大学の付属小学校の5年生を対象に実験を行った。読みの力が上位にあると思われる児童と、やや劣ると思われる児童とを選び、実験を行い、録音テープに収録した。付属小学校の児童に加えて、千葉県の関宿中央小学校の児童で、同様に5年生を対象にして、実験を行った。その場合も、上位、中位、下位と思われる児童を抽出して実験を行った。それらの録音テープを、分析用に複数ダビングし、現在そのテープを分析中である。 統語上のミスキュー、意味上のミスキュー、音声・語形上のミスキューの三つの観点より分析しているが、ほほとんどの場合、読みにおける思考過程において、統語上は問題がなく、すべての被験者を通じて、問題が生じてくるのは、意味上のキューであることが明確になった。とくに、下位の児童の場合、意味上のミスキューが圧倒的に多く、読むということの機能を理解していないことに起因している例が多い。さらに、日本語の場合の漢字は、英語のミスキュー分析とは異なる観点が必要になってくることも判明した。現在、日本語の場合の、音声・語形上の分析方法について検討中であり、さらに被験者を多くして、実験研究を継続していく予定である。
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