|
小学生の概算の理解に関して、下記の点が明らかになった。
1.概算テストとして2種類のものを実施した。計算した答えがどのくらいになるかを3つの選択肢の中から選ぶ課題:「概算の範囲」と、答えの一番大きな桁の数字だけを書く課題:「概算の左の数」である。「概算の範囲」と有意な相関を示す計算能力は、1桁加算と暗算であった。「概算の左の数」は課題に多桁減算を用いたため、1桁加算と暗算に加えて、3桁減算との関係も現れた。1桁加算と暗算能力は、概算を解くための基本的な要因と考えられる。
2.実際の買い物場面での概算のやり方を調べた結果、次の3つの計算方略のあることが示された。(1)頭の中で1の位まで細かく計算する方略、(2)最初は1の位まで計算するが、途中で「だいたいの数」としておおざっぱにとらえる方略、(3)買った品物の価格を丸めてからたしあわせる方略、であった。学校で概算の方略を学んだことがなくても、日常生活場面では自分でいろいろ工夫できることが明らかになった。
3.ビデオで見た他の子どもの誤りや、概算テストで自分が示した誤りについて、その思考プロセスを考えさせる「誤りの修正経験」が概算にどのように影響するかを分析した結果、修正経験の有無よりも学年差の方が影響が大であること、「概算の範囲」と「概算の桁」(答えが何桁の数字であるかを書く課題)の2課題については、「誤りの修正経験」も効果をもつことが示された。
|
