研究概要 |
小学4年生から6年生を対象に、技能や認識面の学習効果の学年差を検討した結果,記録の向上に対する踏切技術の関与率が6年生で60%以上を示し最も高くなることから、走り高跳びの運動課題を「助走の勢いを生かして高く跳ぶこと」と捉えると,学習の適時期は6年生にあると考えられることが明らかにされた.しかし,記録から身長の1/2(体格要因)を引き,垂直跳びの記録(身体資源)で除して求めたハイジャンプスキル指数(HJS指数)の学年平均値を13時間の授業で80点以上に高めることができなかった.このことは,指導書に示されている「はさみ跳び」では,走り高跳びの技能特性に充分に触れさせることが難しく,高いパフォーマンスの得られる「背面跳び」等の導入を検討する必要のあることを示している. そこで,小学生から大学生を対象に「はさみ跳び」と「背面跳び」を行わせ,筋電図とフォームを記録した結果,経験の無い小学生においても「背面跳び」では,踏切期後半の足・膝関節あるいは股関節のいずれかを積極的に利用し「はさみ跳び」よりも踏切鉛直初速度を大きくできることが明らかにされた. また,セイフティマット(50-75cm)を使用した走り高跳び遊びの中で「背面跳び」が自然発生し「はさみ跳び」と「背面跳び」に技術の系統性がみられること,「背面跳び」で跳んでみたいと思っている児童が「はさみ跳び」の約2倍の59.8%存在することが確かめられた.そこで,「はさみ跳び」から「背面跳び」まで発展させて指導した場合と「はさみ跳び」のみを指導した場合の学習効果を技能と情意の側面から検討した.その結果,「背面跳び」まで指導した場合,HJS指数の学級平均値を80点以上に高めることができ,走り高跳びの技能特性に触れさせることができるとともに,走り高跳びを好きにさせ,体育の授業に対する愛好的態度も高め得ることが認められた.したがって,小学校期においても「背面跳び」まで発展させて指導した方がよいと考えられた.
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