1.cDNAprobeを用いたin situ hybridization法によるC型肝炎ウイルス(HCV)検出法の確立 当初の計画ではHCV-RNAの5′非翻訳領域に対するcDNAprobeを用いる予定であったが、検討の結果core領域に対するcDNAprobeを、digoxinの誘導体であるdigoxigeninを標識して肝生検標本上でin situ hybridizationを行った。その結果、HCV抗体陽性患者では約9割に肝組織上陽性細胞(即ちHCV感染細胞)を認めた。RNase消化試験、非標識probeとの競合試験では既に本法の特異性は確認していたが、さらにB型肝炎、自己免疫性肝炎等の非C型肝障害症例を陰性対照として特異性を検証し、特に問題を認めなかった。そこで以下の実験に進んだ。 2.cDNAprobeを用いたin situ hybridization法によるHCV感染の解析 C型肝炎ウイルス感染細胞の分布状態を、以下の項目につき検討し次の結果を得た。 (1)血液中のC型肝炎ウイルス感染マーカーとの関係:血液中HCV-RNA陰性例4/11例に感染肝細胞を検出した。但し、血液中HCV-RNA陽性例では、HCV-RNA量と感染肝細胞の数との間には一定の関係は認められなかった。 (2)肝内HCV-RNA量との関係:肝組織中のHCV-RNA量が10^3コピー以下の症例ではin situ hybridization法では感染肝細胞は検出されず、感度の限界が示された。 (3)C型肝炎の病型との関係:病型と感染肝細胞の分布様式については、一定の関係は認められなかったものの炎症細胞と感染肝細胞との間には分布上密接な関連のある興味深い知見が得られた。 (4)肝細胞癌合併C型肝炎例の癌部、非癌部での差異の有無:癌部では、明かに感染細胞は少数であった。
|